| すでに述べてきましたように60年代後期には、コンポーネントステレオが人気となっており、雑誌「ステレオ」や今はなき「ステレオ芸術」などの雑誌には記事が掲載され、年2回のボーナス時期には別冊なども出て、製品の紹介だけでなく、コンポーネントステレオ特有の構成・チョイス方法などが特集化され、さらに人気を高めました。 |
| 60年代の雑誌に見るコンポーネントステレオの構成のテクニック 月刊「ステレオ」別冊の「あなたのステレオ設計'69」には「音楽ファンのためのコンポーネント ステレオ構成法」なる記事が掲載されていました。  当時メジャーであった３点ステレオ（セパレートステレオ）は予算を決め、購入するだけでした が、どのメーカーのどの製品を選んでも一長一短があり、さらにステレオを趣味とするには買 えば終ってしまう・・・ところもありました。 その点で、コンポーネントステレオは選ぶ楽しみだけでなく、買いたしや買い替えも容易で、 パーツの音の違いなども楽しめるなど楽しみを持っていましたが、逆に初心者には、コンポー ネント・ステレオの利点を生かした思った音の組合せができるかという心配もあった訳です。 記事では技術的という視点とは別に音楽を楽しむという視点でまず、「プログラムソース重 視」ということで始まっています。 １）FM重点の組合せ（ローコスト） ２）同デラックスな組み合わせ ３）テープ重点の組合せ ４）ディスク重点の組合せ 1969年と言えば、FMステレオ放送の黎明期（実験放送→本放送）ながら、こうした分類され ることが、音楽愛好家にFM放送がいかにはやく大きく位置づけられてことに小生は注目しま す。１）〜4)でアナログプレーヤーが１番最後に置かれています。しかし、当時も本格オーディ オはやはりレコードの再生であって、この時点でこの記事はまだかなり先進的な提案であった と思います。 これは言われるように、アナログ・ディスクが高価であった事実があり、FMソースがそれを補 間するということが背景にあった訳です。 そして、この記事が進めているのは、好みのパーツを集めるだけでなく、段階的に成長発展 させるというところです。 １）FM重点の組合せ（ローコスト） これは総合アンプ（プリ・メイン＋チューナー）を中心とするということで、 第１段階＝総合アンプ＋スピーカー、 第２段階＝テープデッキ 第３段階＝プレーヤー というステップを踏むものです。 実際の構成案は２案が提案されています。 ＜A案＞
で総合アンプもこの２社に人気がありました。 トランジスタラジオ、テープレコーダでは力のあったソニーのテープデッキ。すでに当時パイ オニアは専業メーカーでも他社をリードしており、各パーツでも人気でしたが、特にPL−４１で 時代を作ったレコードプレーヤーのシリーズには絶大なものがありました。 一方で、トランスメーカーからスタートし、アンプで人気のあった山水（サンスイ）も格子のデ ザインのスピーカーでこれも人気があり、A案、B案とも、読者にはまず納得のできる提案であ ったわけです。また第１段階としての出費はA案は６万円、B案１０万円は高くなりがちなコンポ ーネントステレオながら、セパレートステレオ並みの出費で入門可能という意図であったので しょう。 ２）のデラックス篇としては、総合アンプをプリメインアンプとチューナーに分ける方式、常套 手段ではありますが、両者同じメーカーで揃えるということやり方です。 ＜A案＞
の組合せには異議のある方もいるでしょう。KT-7000ならアンプはKA-6000を。KA-4000なら チューナーはKT-5000というところではないでしょうか。コーラルは当時、フォスター（現フォス テクス）と並んで実力スピーカーユニットを発売しているメーカーで、価格に対してユニット数の 多い（輸出モデルは対入力が大きいことが望まれた）という特徴がありました。（BX-1200は片 チャンネル６スピーカー５ウェイ） ３）テープ重点の組合せでは 第一段階で、デッキ＋アンプ+スピーカー とするものですが、当時はオープンテープの時代で、ミュージックソースとして売られるテープ （レコーデーッド・テープ）もない訳ではありませんが、チューナーもなく録音もできず、自由な 音楽ソースがないというのは、現実的ではなかったでしょう。デッキはパイオニアのT-6000、テ ィアックのA-4010Sが選ばれています。 第２段階でチューナーを追加、第３段階でさらにテープデッキを追加して録音ソースのダビン グ・編集を狙ったものですが、さらに第４段階は黎明期のカセットデッキ・・・当時このようなス テップアップをされた方はまずいなかったのでは・・・というのが私見です。 ４）ディスク重点の組合せは、おそらく60年代もっともポピュラーなスタイルではないでしょう か。２案の提案がありますが第１段階で、アンプ＋プレーヤー＋スピーカーで、第２段階で、チ ューナー、第３段階でテープデッキという、オーディオマニアがやっていたステップです。 プレーヤーはパイオニアのPL-41C＋シュアーM-75GとPL-31Dということで、この特集を通 してプレーヤーはパイオニアの独占。アンプではラックスのSQ３８FD、SQ606、スピーカーは オンキョーと松下というところです。 この記事を通して、パイオニアのコンポーネントのウェイトが高いこと見えてきます。 そして記事のまとめとしては、パーツへの重点投資と、好みのパーツの組合せ、段階的発 展と大変マニアックな提案がされています。 さてこの時点でどんな組み合わせを選ぶべきだったでしょうか？ 記事の後編「ステレオ・パーツ研究」は、これまた当時多かった、各パーツへの金額投資比率 論です。 まず、各コンポーネントがいくらくらいしたかです。 １９６０年代後期 コンポーネントの価格帯
比率に関しては、トータル価格で場合わけがされています。 費用分配係数
こうなる背景として、各コンポネントのもつ価格別重要度要素と、 そのコンポーネント自身の価格があります。 もちろんこの価格配分であれば良い結果となるか？という問題も有り 選んだセットの配分がこうなっていることはある程度必然と考えた方が 良い・・・と小生は認識していました（・・・と言っても当時中学生であったのですが）  当時の教科書的存在であった「ステレオフォニック」（1970年刊オーム社、著者いずれもパイ オニア） では ・一応１０万円というところ線が引ける ・最初から完全（ある程度の納得？）には１２〜１５万円 ・一時完全でグレードアップを前提には７〜１２万円で、この価格なら メーカーのセットの方がバランス良いとしています。 コンポーネントとしては重点を置いた方が後々の発展が期待でき、 それを考慮するなら、 １）当面はレコードだけを聴く、チューナーはラジオ、 ２）FMで楽しみ、プレーヤーは後で ３）スピーカーは後で、それまでヘッドフォン のようなアイデアを提示しています。 成功するお金の掛け方は、本来はスピーカーだが、価格・内容に幅があるので、 第一にプレーヤー、次にアンプ、そしてスピーカーとしています。 レコードプレーヤーは一度買うと買換えは少ないので３〜４万円、あとのスピーカーのグレード アップを考え、アンプの出力を考える・・・とあります。  ＊1960年刊「LP電畜入門」での配分はプレーヤー3.5、アンプ3、スピーカー3.5としています。 「あなたのステレオ設計’69」を参考に提案の製品を購入したとして・・・今日はどうかと考えて みました。 ・レコードプレーヤはダイレクトモーター出現前です。カートリッジこそセットもの以外でしたが、 モーター、アームなどを組み合わせが多くなったのは70年代に入ってでした。当時高額でした が、SME3009、シュアーV15を選べば面白かったでしょう。 ・アンプに関して、トランジスタが中心となった頃ですが、まだ完全対称となる前、出力コンデン サー付きのアンプがほとんどでした。組み合わせ例ならラックスのSQ-38F、MQ36、マッキント ッシュC22くらい。 ・スピーカーでは、タンノイIIILZ、ランサー77、アルティックバレンシア。 いずれにしても中途半端でないものはたいしたものであったということのようです。 オーディオについても、もしあの時、あんな選択をしていたら・・・そんなIFも面白いですね。 ■60年代のオーディオを立ち読みしてみよう
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